私の斜め研ぎの持ち方



「どのように持てば良いのか?」と聞かれれば、私自身は正しい持ち方というものが分りませんので、「自分が研ぎやすいように持つ。」というぐらいの返答しか思いつきませんが、正しい持ち方や基本的な持ち方として教えてくださる所もあるのかもしれません。

ここではあくまで私個人の持ち方ですので、必ずしも真似をして良いものか、あるいは良い結果が得られるかというのは別として、持ち方の一例として掲載させていただこうかと思います。

『斜め研ぎだと安定するのはなぜ?』
のページをご覧になった事のない方は、最初にそちらをお読み頂いた方が内容が分りやすいと思います。





鉋の場合




これは斜め研ぎを始めた時からの持ち方で、左手(画像の右側の手)は画像では人指し指を一本だけ鉋の真ん中に添えていますが、本来は中指と人指し指の二本を真ん中に添えていました。







これは現在の持ち方です。
以前の持ち方から右人指し指をサイドから外して真ん中に持ってきた訳です。
狙いがあってこの持ち方にしたかというと順序が逆で、研いでいて自然とこの持ち方に変形したので、言葉としての理由は後付けですが、恐らくといでいる最中に以下のような事を思ったのでしょう。

まず、第一に斜め研ぎの斜めの振り幅の自由度が、最初の画像の持ち方よりも楽に増えるという事です。
右人指し指がサイドに残る事で正面研ぎ(砥石に対して刃先方向に対して直交に研ぐ)に近くなるほど手首に負担がかかりやすいのですが、これが楽になるのです。
以前の持ち方だと45度よりも更に鉋身が研ぎ方向に対して横向きに近くなりがちなのです。

この鉋身の方向に意味があるのか?45度なら45度で一定で良いというのであれば、自由度のある持ち方である必要はないのですが、どうやら私の場合は必要なようです。
この件に関しては、また後ほど。

そして第二に荒研ぎや中研ぎでザックリ下ろす際に、左人指し指だけでは力不足なのを補う為です。
仕上げ研ぎでは、右手人差し指は力を抜いて添えているだけです。

第三は角度調整です。これは先程の鉋身の振り角度ではなく、切れ刃の研ぎ角度の調整です。
鉋の両脇を抱える際、なるべく刃先よりを持った方が、研ぐ際にぐらつきにくく安定しやすいと思うのですが、当然頭が重いのでシーソーのように頭側が重くて下がります。それを右人指し指で丁度よい角度で支えると手が決まります。



またも気持ちの悪いイメージを使って説明すると、こんな感じでしょうか?
赤丸の位置を両側から持つと、赤丸の位置を軸に刃先が上がろうとするので、同じ方の手の人指し指で跳ね上がりを押さえる事で角度を安定させやすくなる

手の中で鉋の位置と角度が決まったら、次は鉋身が比較的新しく長さのある場合は、同じ右手の薬指と小指を軽く握りこむようにして、鉋身の背中の方に指を回し支えます。

長さがあれば頭がより重くなり研ぎ角度が寝て鋭角になりやすいので、自然とフォローできます。

それ程長くない場合は薬指しか掛かりませんし、ほぼ使いきった小鉋などで短くて薬指すらも掛からないような場合は、頭の重さを殆ど感じないので問題ありません。

基本的には右手首の甲を中心に上に持ちあげるように曲げようとすれば、切れ刃角度は鈍角になります。
少しの角度の力加減は、全体のバランスはそのままで、右の薬指と小指の握り加減を調節する事で微調整が可能です。

以上のように右手のコントロールの準備が出来れば、あとは左人指し指をセンサーにして砥面の様子や刃の研削位置や状態を感じ取ッた情報を元に、右手が全体を補助・修正します。







ちなみに荒研ぎや中研ぎで力を入れて研ぎたい場合は、この様に左中指と人指し指を並べて研いだりしていますが、人指し指の方が感覚が掴みやすいので、肝心な時と仕上げ研ぎの時には、人指し指一本だけにしています。





鑿の場合




鑿の持ち方が特に研いだ事が無い人や少ない人にとっては迷う所のようですが、私もやはり正しい持ち方は分りません。
研ぎやすいように持って研いでいるだけですから。

この角度からパッと見た所、大して変わりませんが鉋の持ち方から少し変形して持っています。







左手は人指し指を添えるだけなので外して右手一本だとこんな感じ。

右親指を鑿の肩の部分に添えています。
こうする事で鑿が回転しにくくなるのと、研ぎのストロークの前へ押す作業がしやすくなる事を狙って自然とこういう持ち方になったのだと思います。




分りにくい他の指はこんな感じです。
全体的には右手首の間接部分が上に持ち上がるように曲げるほど切れ刃が鈍角になります。
手首の角度をほぼ切れ刃が砥石に密着する位置で決めて、繊細な微調整は小指と薬指の微妙な握りこみの強さで変える事ができます。





斜め研ぎの振り角度

斜め研ぎとは、砥石に対して刃物を斜めにあてて研ぐ事に違いないのですが、正面研ぎや刃を真横に向ける場合と違い、45度でも70度でも斜め研ぎであり解釈の範囲が広い訳ですが、常に45度なら45度の角度で研げば良いのか?といわれると、それも有りでしょう。

しかし実際に自分で研いでいると、無意識に振り角度を微妙に変えています。

正面研ぎにする場合は刃先に向かって刃が丸くなりやすく、横向け(刃先に平行、刃裏と同一方向)に研ぐと刃先方向の丸みは制御しやすくなるが、幅方向に丸みがつこうとする。

つまり研ぎによる形状的な事だけをいえば、斜め研ぎはこの中間的な性質になります。
このサイトでは平面に研ぐという事を中心に話を進めてきましたが、平面に研ぐ場合は特に砥面と切れ刃の接する面積が大きいので、砥石によってストロークの重い軽いがより鮮明に出ます。

砥石が変わるごとに重さもコロコロ変わりますし、刃物の地金の素材などでも重く感じたりする物もあります。

私の場合はザックリいうと、研ぎ感の軽い場合や刃先側を力をこめて研ぎたい場合は45度よりもより正面研ぎに近い角度で、研ぎ感の軽さが平均的で通常の研ぎの場合と切れ刃の角度を鋭利にしたい場合が45度前後、研ぎ感が重かったり刃先に向かって丸みがあるように感じたりする場合が、横向きに近くなってくるようです。

実際は研いでいる最中に左人指し指が感じとった状況次第で、同じ砥石で研いでいる間も振り幅を微妙に変えて微調整したりする事もあります。

段階的に振り幅があるのではなく、45度を中心に無断切り替えといった感じでしょうか。





左人指し指について

『斜め研ぎだと安定するのはなぜ?』のページの最初に図でも説明した通り、私の研ぎ方の場合は左人指し指で刃幅の中央当たりに力が加わるようにしています。
これは仕上げの行程では、かなり力を抜いていますが、それでも最低限安定させるだけの力は加えています。

そしてこの力の加え方ですが、寸八の幅の鉋ではなるほど指一本は点で力を加えるという事は分らないでもないでしょうが、これが5分鑿やそれ以下の幅の物なら、もはや指一本の大きさは点ではありませんね。

説明が不足しておりましたが、実はそうではありません。
もっと細かい意識をもって力を加えないといけないのです。
指一本が最小単位ではないのです。

3/3 以下修正しました。




以前の説明と感覚的にズレがあったので、図とコメントを少し変更しました。

また変ちくりんな図で申し訳ないですが、左人指し指を手のひら側から見た図です。

私の場合は大まかに見て人指し指の腹の部分の五箇所ほどを使って研いでいます。

つまり指の腹全体が点ではなく、指の中で更に細分化して点で使う訳ですが、それでも幅の狭い刃物などの場合、それぞれの番号のエリア部分の中に更に小さな点をイメージして力を加え、力を加えた点に対し、砥石との摩擦位置がどこかを感じ取りながら押さえる位置を調整します。

・・・ 通常の研ぎ〜切れ刃角を鈍角にしたい場合など。
・・・ 通常の研ぎ〜やや鋭角にしていきたい場合。
・・・ 最も刃先に力を加えたい場合で、裏押しの際に刃先に力を入れたい場合など。
・・・ 刃先に力を加えながら、刃の手前側(刃先を上にして裏側から見た時の左側)を基準に平面に調整したい時など
1〜4は決まった位置に置いて指を刃の裏側で転がすように傾けて、力点の位置を微妙に変えています。
・・・ 研ぎ感の重い砥石や刃が全体に平坦に研いでいるはずなのに安定考えられない時など。
5は他の番号のエリアと比べて刃先から遠い位置にあります。通常はやや横から斜めに左人指し指を添えていますが、それよりも縦に近い角度に添え5のエリアで押さえます。

個人的にはスピーディーに研ぐには向かないと思います。あくまで修正です。

5のエリアは指の腹で一番後方のエリアですので、一番後方から力加減をする事になるので自然と平均して下向きよりも前方向への力の配分が増えてきます。
砥石との摩擦力で突っ張る感じと切れ刃の角度を維持する為の一定のバランスを感じとる事が一番重要で、それを認識しながらストロークします。

1〜4のエリアでも、やや力を入れて研ぐ場合など、斜めよりも研ぎ方向に向かって縦方向に左手の指を添えると良いですし、刃物の斜めの角度の振り幅と合わせる事で自然と状況に応じたバリエーションが増えます。

「平面に研ぐ事に挑戦しているがなかなか上手くいかない。」という方のヒントになれば良いのですが・・・。

なんか分りにくいですよねぇ。はぁ〜(ため息)。文字だらけやし・・・。

しかし感覚的な事はやはり感じとれるようになるまでの最低限の修練が必要です。
とはいえ漠然と研いでいるよりも、きちんと意識をもって研ぐ事で早く感覚は身につくのではないかとも思います。


慌ててページを作成しましたので、意味不明や理解不能な文章になっているかもしれませんので、その時はお知らせください。必死でとりつくろいます(笑)