ナニワ 剛研 玄人(プロ) #1000



メーカー規格寸法 210(長さ)×75(幅)×30(厚み)



硬さ:35   下り:33   研ぎ感の軽さ:35




炉で高温焼成された製品ではないかと思われ、陶器のような音がする。
お店で2枚あるうちのより硬そうな方を選んだつもりだが、殆ど違いは分からず気分的なものである。
焼き加減での硬さの個体差があるかもしれないが2枚しか比較対象が無かったので分からない。

漏れ聞く所によると『キングハイパー』の対抗品というコンセプトのようである。


用途は箱書きの順序通りでいくと、かんな、のみ、電気カンナ刃、カマ、ハサミ、打刃物、ナイフ、ステンレス刃物、料理包丁、彫刻刀、その他精密刃物とある。

薬ならだいたい箱書きの順序通りに得意とするようであるが、どうであろうか。

泥も出やすく、包丁などでもそれほど馴染み難い事はないのではないだろうか。
鉋や鑿などでは硬くはない。




使用方法は上の画像の通りで、通常このタイプの砥石の場合、しっかりと水に浸け込んで充分に吸水させてから使用するように思えるが、2分ほど砥石の半分程度の水深の水に浸けて、表面まで水が浸透するのを待つのが、メーカー推奨の使用法のようだ。

神経質な使用法が書いてあるが、これでは水に濡れた状態で砥面を修正してからは使えないし、プロ用でありながら通常よく行われるバケツの水に浸けっぱなしという使用は出来ない事になるが、この使用法を推奨している事から、この加減に何かしらの意図があると思われる。




なおパッケージはこのような箱で、似たような箱であるがこのバージョンでなく『剛研デラックス』という砥石も安価で販売されていて、『剛研 玄人』にはない粒度も販売されているが、キングデラックスを意識した商品なのかもしれない。

どちらのシリーズも価格的な設定はキングを凌駕しているが、さて使用感はどうなのかという部分に興味が湧いてくる。




まず上側の画像のように乾いた状態から(今回は砥面を修正せず新品の状態の画像)表面は水に濡れない状態にして水に浸けると徐々に端から表面に水分が浸透してくる。

とりあえず2分も待たずに全体が濡れるが、見えない部分が乾いている可能性や、水分の含有不足を考慮して推奨の2分間が経つと下側の画像のようになる。

画像では分かりにくいが、少し表面がみずみずしく見える気がする。




使用法通りに砥石の表面を濡らさずにに2分間水に浸けた後に研ぎはじめ、普通なら水を表面にかけますが、表面を濡らさずにという説明の意図が分からない。
一定以上の水分を吸収させるなら何分以上水に浸けると表現するはずである。
そこで、使用法通りの吸水をした後に表面に手水をかけないで研ぐ事にした。

まず研ぎはじめると下り具合は黒幕ほどとまではいかないまでもまずまず良好である。

しかし当然の事ながら使用と共に泥が出てくる。
砥石自体に保水力があるので、刃が接して圧のかかっている所は水分がにじみ出ているようだが、発生した泥の量しだいで印象が変わる。

使用に伴い泥が出ると砥石との間に泥の膜ができる。
砥石からにじみ出てくる水分に対し、泥の比率が多すぎれば目詰まり感というのが正しいか分からないが砥面の表面なりの研ぎ心地は無くなり、粘りが増え泥の膜に乗り上げたような感覚になる。
但し研ぎ傷は細かくなるようである。

つまりこういう事ではないか?
研ぎだしでは水分の多い良好な研磨力で刃を下ろし、最後にはこの泥の比率の比較的高い状態で終える事で下りが良く研ぎ傷が浅いという事を、研ぎ方ではなく暗に砥石の水分含有量を推奨する事で体感してもらいたいというのが、メーカーの狙いなのかもしれない。

しかしながら今回は新品で砥面修正もしていない事もあり余計に刃と砥面があっていない為に必要以上に泥の膜の上に乗り上げた感は否めない。



次に砥面を修正してから、しっかり10分以上水に浸けてから研いでみた。
この方が自分としては研ぎやすく感じたが、砥面を直した影響もあるかもしれない。
砥石が完全に乾くのを待っていられないので、砥面を直しての2分間だけ浸けた場合の試し研ぎは出来ていない。

しっかり水に浸けた場合の方が、泥のねばつくまでの時間が長いように思う。
砥面を直したせいか、泥への乗り上げ感もましである。
また泥の粘度が上がってくると手水をかければ、そのまま目詰まりした塊が砥石に食いついたままという事はなく、すぐにサラりとした状態に戻る。

上のひとつ前の画像と比べると前の画像の方が泥の粘りが強く、泥の膜が砥面との間にできて砥面の色が見えている部分が少ないのに対し、こちらは泥の膜が薄いので砥面の色がそのまま見えている部分が多いのがわかるだろうか。

僕としてはこれくらいの方が心地よい。

キングハイパーの対抗品としただけあって、高温焼成品にありがちな地を引くようなガサガサとしたガサツな感触は無く、なかなかバランス良く出来ていると思う。
値段は約1000円近く安いのではないだろうか。



泥の粘度が上がってくると、このようにかなりの粘度である。
大体どの砥石でも使用していると硬すぎず全く泥が出ないような砥石でなければ、水分が減るといずれこの状態となるが、対抗品の『キングハイパー』と比べるのであれば、『キングハイパー』よりもこの状態になるのが早いように思われ、研ぎ方や下ろす量にもよりますが研いでいる最中に水をかける頻度はこちらの方が多いように感じた。

但し僕の『キングハイパー』は、硬さは標準タイプの中でも明らかに硬い物を選んでいるので、純粋な比較とはならないと思う。
通常の硬さの『キングハイパー』なら同じような結果かもしれないし、硬度や下り・研ぎ感の軽さももっと似たような数値かもしれない。

ちなみに僕の持っている標準より硬いであろう『キングハイパー』よりはやはり軟らかく泥も混じりやすい感じで、研ぎ感の軽さは『剛研 玄人』の方が軽い感じがした。

通常の硬さの『キングハイパー』なら同じような硬さではなかろうか?
しかし砥面の感覚がフワフワと分かり難くなる事はなく、意外としっかりと研いでいる最中の砥面と刃の感覚は掴めるので、比較的研ぎやすかった。

早く下ろしたければよく水をかけて、研ぎ傷を浅くしたければ終了時には泥の膜を上手く利用すると良いという部類の砥石なのかもしれない。

まだ殆ど使用していないので、また更に良し悪しの印象も変わってくるかもしれないが、『キングハイパー』の対抗品を謳うだけあって、現在の印象では製品としては上手くまとめているように思う。

何よりも値段設定がなかなか憎いですね。
これは『キングハイパー』には圧勝ですが、他の主だったセラミック砥石の性能や研ぎ感・寸法や値段と比較しても、心憎い設定のように思います。